河口 仁さんのこと


中野劇団第19回公演『代役』、第20回公演『10分間2019』に
ご出演いただきました
俳優河口仁さんが、2020年10月9日にご逝去されました。


11日にお別れをして、一週間以上が経ちました。
まだ、何となく飲み込めず、よくわからないまま、
日常に流されて……。皆様もそんな感じなのでしょうか。

河口さんに出演をお願いしたときに、あんなにいろんな劇団さんからお声がかかる人なのに、まるで特別なことのように喜びを表現してくださったのが凄く嬉しかったです。

『代役』は新作の長篇で、稽古の中で脚本を作っていきました。
他劇団の稽古を見る機会が殆どないので、自分では普通のことだと思ってたのですが、うちの芝居の作り方に河口さんは大変驚いていました。
「中野劇団やばいぞ。ホントに最後までエチュードで芝居作るんだよ」
お知り合いの役者さんに、劇団のことを広めて下さったのが嬉しかったです。
そんな方々とこれから繋がっていけるような予感もしています。

稽古が殆ど脚本の話し合いで終わった日もありました。
僕はそういう話し合いを録音しておいて、家で聴きながら脚本を直したりします。
録音をいくつか聴きました。
みんな真剣で、でもそれを楽んでる雰囲気も感じられます(その時は産みの苦しみで楽しむどころじゃなかったでしょうが)。
河口さんは、録音の中でそんなに沢山は喋ってなくて、でもたまに喋ると、面白くてみんな笑っています。
こんなやり方でしか芝居が作れない非常識で不器用な僕らのことを見守りながらも、ご自身も楽しんで作って下さってたのではないかと思います。

『代役』で河口さんが演じた朋彦は、二人の子供を育てる父親の役でした。
僕の脚本力演出力を超えた、味のある役を生み出してくださいました。

『代役』



『10分間2019』で演じていただいたのは、春親という関西弁の役で、
ネイティブのようなイントネーションを習得するために、
共演者の方に、本当に細かく確認をされていたのが印象的でした。


『10分間2019』稽古風景


『10分間2019』大阪HEP HALL

東京公演と上映会、二回も東京に行くことができました。

今後どんな芝居を作るとなっても、河口さんならどんな役でもできそうだし、
ずーっとオファーを掛け続けたいと劇団のみんなで話してたのですが……。
もう少し一緒にやりたかったです。

僕が最初に河口さんとお会いしたのは確か、
30✕30の『結婚の報告』を観に来てくださった時で、
「めちゃくちゃ面白かったです」って言って下さったのが嬉しかったです。
また面白い芝居作ったら、何かしらの方法で頑張って観てほしいです。

本当にありがとうございました。

2020年10月20日
中野劇団 中野守


↑『10分間2019』稽古初日
↓稽古最終日